成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

一回きりじゃ、わからない

2010年4月26日

英語教室の仲間にひとりにTさんがいる。IT分野のエキスパートで、さまざまなIT技術をマスターしている。IT音痴としては、じつに心強い。

先日、そのTさんが、あるウェブツールの使い方を紹介してくれた。それを使うと仲間同士のファイル共有がなんとフリーでできるという。「その利用方法をパワーポイントにまとめてみたのが、これです」。そういうとTさんは、パワポの画面がうつくしく印刷されたプレゼン資料を、わたしたちに手渡してくれた。矢印などがうまく使われていて、とても見やすい。すごい、こんなこと、できるなんて。もう、感心しきりである。

家に帰って、さっそくパワポの資料どおりの手順で、やってみた。ところが、できない。何回かやってみたが、それでも、できない。なぜだ。なぜなんだ。そのうち、だんだんいやになってきた。まあ、つぎのミーティングでTさんにきいてみよう、と、そのまま、ついに放り投げた。じつは、いまのこの段階でも、できないままだ。

けっしてTさんのインストラクションが悪いのではない。本当によくできた資料なのだ。でも、それでもできないのである。たぶん、どこかで勘違いをしているのだ。しかし、その「どこか」がどこなのかが、わからない。

そのとき、はっと気づいた。ひょっとすると、英語学習や翻訳学習でも、同じことが起こってるんじゃないだろうか。こっちは懇切丁寧に教えたつもりでも、じつは相手側にはちゃんと伝わっておらず、どこかで勘違いをしたままであり、そしてその「どこか」がわからないままになっているのではないだろうか。

ということは、インストラクター側としては、一度おしえただけでは駄目だということになる。同じことを、何度も何度も繰り返す必要があるのである。

うーん、なるほど、そういうことだったのか。そうだ、一回きりじゃ、わからないんだよなあ。英語が上達する秘訣は繰り返すことだって、いつもいってるけれど、じつは英語を教える秘訣も繰り返すことだったんだ。

などと、まあ、自分の不出来は棚にあげつつ、なんだか新しいことがわかった気になっている、いまこの瞬間である。

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