成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

動詞でなく動詞用法といおう

2011年7月13日

日本人の英語認識で大きく歪んでいるものの1つに「品詞」(part of speech)という概念がある。ほとんどの日本人は英語の語には名詞、動詞、形容詞、副詞といった「品詞」があると考えている。chairは名詞という品詞、walkは動詞という品詞、roundは形容詞という品詞といった具合だ。中学で英語の先生が「chairの品詞はなんですか」とたずねれば、ほとんどの生徒は「名詞です」と答えることだろう。しかしこれは間違った認識である。

英語の語にあるのは品詞ではなく「用法」という区分である。Chairにおける名詞「用法」、walkにおける動詞「用法」、roundにおける形容詞「用法」である。chairという語にはたしかに名詞用法はあるが、それ以外に動詞用法もある。walkという語には動詞用法があるが、名詞用法もある。roundという語に形容詞用法はあるが、そのほか動詞用法も副詞用法も名詞用法も前置詞用法もある。roundはほぼすべての品詞をカバーする用法をもっている。

それぞれの語によって許容する用法の広さは異なる。ひとつの用法しか許容しない語もあるが、英語の語の多くは複数の用法を許容する。water, man, deskといった名詞用法しか許容しないようにみえるものにも動詞用法がある。

こういった本質的な誤解がなぜおこるのかといえば、日本語の場合、語の品詞はつねにひとつだけと決まっているからである。「椅子」はつねに名詞であり、動詞になることはない。「歩く」はつねに動詞であり、名詞になることはない。「丸い」はつねに形容詞であり、動詞や名詞や副詞になるはずもない。日本語では語のかたちそのものが品詞を決定的に決めるからである。そして日本人の多くがそうした日本語の認識を英語に持ち込んでしまっている。

日本語の認識を英語に持ち込むことの弊害は発音などでよく指摘されるもの、品詞分類ではあまり指摘されない。しかしこれは発音以上に私たちの英語理解を阻害するものである。この間違いを避けるために、今後は動詞、名詞、形容詞というかわりに動詞用法、名詞用法、形容詞用法というようにすればどうだろうか。英語学習でのよけいな混乱がなくなるのではないかと思う。

Categories: ことのは道中記 日本人の英語教育 未分類