成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

教育のためのビジネス、ビジネスのための教育

2010年4月29日

仲間とともに英語教室の立ち上げミーティングを重ねている。既存の英語教育にとらわれず、ゼロから独自の英語教育を作り上げようというのが、私たちの基本理念だ。学びつづけながら、無理をせず、自分にうそをつかず、お互いに助けあって、楽しみながら、ゆっくりと前へ進んでいきたいと考えている。

先日のミーティングでは、仲間のひとりであるFさんが英会話学校の講師時代の話をしてくれた。英会話教室を教育というよりもビジネスとして成り立たせるためにFさんが行った努力と苦労の数々は、まさに壮絶なものだった。いつもあれほど穏やかなFさんが話の途中にみせた厳しい表情を忘れることはできない。

Fさんの話の背後には、現場のことなどなにも考えず業績向上しか念頭にない経営のあり方もくっきりと浮かび上がっていた。こういう経営のもとでは、現場が頑張れば頑張るほど、状況はさらに悪化する。ピーター・センゲのいう「システム的な負のループ」に陥っているのである。こうなってしまうと組織はもう駄目である。一個人としては、自分が壊れる前にそこから逃げ出すのが最良かつ唯一の方法である。自分が頑張ればなんとかなるなどと決して思ってはいけない。

親方日の丸でないかぎり、いまの日本で教育事業をしようとすればビジネスとしての側面を無視するわけにはいかない。だが、そこで忘れてはいけないのは、「教育のためのビジネス」と「ビジネスのための教育」とは、外見は同じだが、本質的にはまったく異なるものだということである。教育のためのビジネス活動は教育を成り立たせるためにあるが、ビジネスのための教育活動はビジネスを発展させるためにあるものだ。

もちろん実際の教育ビジネスには、この2つのコンセプトが混在している。まったくピュアな教育のためのビジネスもなければ、逆に100パーセントビジネスの教育も現実にはない。ようはバランスの問題である。

大事なことは、この2つのコンセプトの違いを明確に認識し、そのなかで自分がどのようなポジションを占めるべきかをつねに意識しておくことである。

英語教育の世界に数多く存在する「ビジネスのための教育」を否定するつもりはない。ただ私たちがいま目指しているのは、そうした英語教育では決してない。できうるかぎりであるが、私たちは「教育のためのビジネス」を目指していきたいと思う。そしてそのための準備を、いま重ねているところである。

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