成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

桶谷秀昭の「「文化守る明治の精神 学べ」を読んで

2012年4月18日

今日の日経新聞夕刊(2012.4.18)の文化面でひさしぶりに桶谷秀昭の名前を見つけた。日本を代表する(と私は判断する)文芸評論家のひとりだ。桶谷の主張に触れるのは20年ぶりぐらいかも知れない。

タイトルは「文化守る明治の精神 学べ」。おもな主張はひとつ。最近(というのは大正以降のことだが)の「国際化」で、日本は価値観を喪失したということ。以下、忘備録もかねて最後の部分だけ写しておく。

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明治の40年ごろまで日本はいわば半植民地の状態でした。関税自主権を取り戻したのは日露戦争後で、やっと完全な独立国家となった。だから、明治の人が「文明」という時には、自虐感情がつきまとっている。日本が西洋化を嫌って、日本の伝統を守れば、日本は滅びてしまう。一方で日本の独立を失ったら元も子もない。だから西洋の模倣をしなければならない。そういう大きな逆説を生きた。

岡倉天心や新渡戸稲造、内村鑑三は、自ら英語で書いて、日本の伝統、文化を世界に発信している。英語を、ただありがたがるのと違います。半植民地状態から西洋に学び西洋と対決して近代国家を築いていった明治の人の努力に今、学ぶことは多いはずです。

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いまもなお「大きな逆説」を生きている私たちにとって、桶谷のいうように明治に人から学ぶことはたしかに多い。しかしだからといって、彼らと同じことをするわけにはいかない。目指すべきは、岡倉や新渡戸や内村とは違うかたちでの、彼らに学びつつ彼らを越えるかたちでの、日本の伝統、文化の世界への発信ではないか・・・などと、まあ口先でいうだけなら、簡単なんだけど、ねえ。

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