成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

「関西3大学学長シンポジウム」を読んで

2011年11月24日

今日の日経新聞(2011.11.24)に「関西3大学学長シンポジウム」という特集記事が載った。京都大学総長の松本紘氏(宇宙エネルギー工学)、大阪大学総長の平野俊夫氏(免疫学)、神戸大学学長の福田秀樹氏(バイオ燃料)の3氏が、それぞれに、今後の関西、日本、世界のあり方について持論を述べている。それがそれぞれにたいへんに興味深いものだった。関西の3大学は面白い、考え方が核心をついている、という印象を強く受けた。

まず国際化についてだが、阪大の平野氏は「国際化イコール英語ではない」と明確にしたうえで、留学生には日本文化を理解してもらうように努力していると述べている。東京の大学では、なかなか聞かれないコメントだ。京大の松本氏は、国際化で重要なのは日本文化をいかに発信できるということであり、そのためには知識や知恵、社会観がなければならないと論ずる。これも国際化においてきわめて重要な視点であるにもかかわらず、東京ではなかなか深く論じられていないテーマである。平野氏、松本氏の意見を足すと、「真の国際化」とは単に英語が使えるようになることなどではなく、日本の文化や知識を世界にどんどん発信していくことができるようになることである。これは私の従来からの主張と同じであり、心から賛同する。

つぎに科学技術についてだが、京大の松本氏は、科学技術における研究の細分化が大きな弊害を生み出していることを指摘し、今回の震災や原子力災害のような問題を、細分化した研究者たちの集団で解決できるとは考えにくく、科学のみならず医学、人文学などにまたがる広い素養と責任感を持った人材を育てなければならないと論ずる。研究の細分化とは、丸山真男のいう学問の「たこつぼ化」のことであり、庶民的な言葉づかいでいえば「専門バカ」のことである。阪大の平野氏はさらに踏み込んで、人間が自然を完全にコントロールするのは不可能だとして、自然や病気を克服するのではなく共生するという視点が必要と主張する。いずれにしても、両者ともに近代の学問の限界というものをしっかりとわきまえているところに、真の知性を感じる。こうした真の知性が関東の大学には、まだ少し足りないのでないかという気がする。

学問と実務との連携についてだが、神戸大の福田氏は、大学や企業との連携をもっと進めていかなければならないと主張する。実際に神戸大学は関西の大学のみならず東北大学とも連携を進めているのだという。大学、企業を問わずそれぞれの強みを持ち寄ったネットワークこそが新しい価値を生み出すという福田氏の考えには、大いに共鳴できる。

国際化、科学技術、産学共同という3つのテーマのいずれにおいても、この3大学の方向性は正しいものだと思う。もう一度関西に戻りたくなる気を起こさせるような、卓越した記事であった。

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