成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

もし日本が100人の村だったら

2011年8月30日

あるところに村人が100人の村がありました。その村はむかしまわりの村と大きないさかいをしたせいで荒れ果ててしまいましたが、そのあとに村人たちがよく働いたおかげで、いまはずいぶんと豊かになりました。

ところがどうしたことでしょう。豊かになったあと、村はおかしくなりました。それまで一緒に暮らしていた一族がバラバラになりました。悪いことをする村人も増えてきました。なにより村人たちが子どもをつくらなくなったので、子どもの数がどんどん減っていきました。その一方でみんな長生きになったものですから、村は年寄りばかりになってしまいました。いま100人の村人のうちの23人が65歳以上の年寄りです。年寄りの数はどんどん増えており、そのうち100人のうち40人が年寄りになるとされています。

若い村人たちはそれでも毎日懸命に働いているのですが、なかなか暮らしが楽になれません。だから子どもをつくろうにもつくれません。その一方で年寄たちは村から生活の手当をもらって、毎日ぶらぶら暮らしています。

そうこうしているうちに村が貯めてきた財産もすっかりなくなってしまいました。このままでいくと村は間違いなくつぶれます。なんとかしないといけません。まずは村の財政をまともにするために年寄への手当を減らさなければなりません。また一生懸命働いている若い村人たちの暮らしを村で支えることも必要です。そうすれば若い人たちの生活に余裕ができて子どもをつくることもできるでしょう。こうした取り組みを地道にしていくと、村にも昔のような活気が戻ってくるかもしれません。

ところが、そうはならないのです。この村では、ものごとを決めるときに村人みんなの意見を聞いて一番数の多い意見にあわせることになっています。でも一番数の多い意見はつねに年寄たちの意見なのです。だからいつでも年寄に都合のいいことしか決まりません。年寄りたちは自分たちの手当を減らされることを嫌がりますし、若い者を大切にするという気持ちもあまりありません。

結局のところ村人たちはあいかわらず昔にため込んだ財産を食いつぶしながら毎日を暮しています。でもこんな暮らしが長く続くはずがありません。この村がたいへんなことになるのも、それほど遠い先のことではないでしょう。

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