成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

リズム

2010年9月20日

「リズム」とは規則的に繰り返されるパターンのこと。音声の場合には、強弱、長短、高低といった要素が規則的に繰り返されることをいう 。

このリズムの基本的なあり方が日本語と英語とではまったく違う。日本語のリズムの基本単位は「音節」だ。つまり「あ、い、う、え、お、か、き、く、け、こ、きゃ、きゅ、りゃ、りゅ、ん」などである。その数は約100個。その100個の音節がすべて同じ長さを持っている。したがって「ハラ」は「ハ」の2倍の長さで発音され、「ノハラ」は3倍の長さで発音され、「アマノハラ」は5倍の長さで発音される。以下の和歌をみてほしい。

あまのはら○○○
ふりさけみれば○
かすがなる○○○
みかさのやまに○
いでしつきかも○
(阿倍仲麻呂)

○は音のない一拍の印である。すなわち和歌とは一拍8個の5ユニットが集まってできている詩形式である。

いっぽう、英語のリズムの基本単位は「強勢」である。「強勢」とは強いアクセントのこと。すなわち英語では、強いアクセントがほぼ等しい時間間隔で繰り返されるのである。以下の例をみてほしい。

1. The car is here now.
2. The car will be here in a moment.
3. The car will be in the ga rage in a moment.

この3つのセンテンスの長さはすべてほぼ同じである。そして強いアクセントを持つ音節のあいだの時間の幅が同じである。ところが1~3においては、その強い音節のあいだにそれぞれ異なった数の弱いアクセントの音節が入っている。ということは、1のセンテンスの弱いアクセントの音節にくらべて、3のセンテンスの弱いアクセントの音節の長さは、非常に短いものでしかないということになる。

このように英語では弱いアクセントの音節の長さが一定に決まっていない。これこそが英語音節の最大の特徴のひとつであり、そして音節の長さがつねに一定である日本語と根本的に異なっているところである。

日本人が英語を学習するときに、こうした日英の音声の根本的な違いを知らないでいると、無意識のうちに日本語のリズムの基本を英語に持ち込んでしまう。そのため、うえの3つにセンテンスを日本語のように、1のセンテンスは短く、3のセンテンスは長く発音してしまう。そうすると、ひとつひとつの単語の発音がいくら正しくとも、英語らしくなくなってしまうのである。

日本語のリズムから英語のリズムへ。この切り替えを、日本人英語学習者は一刻も早くマスターしなければならない。

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