成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

原発事故と太平洋戦争

2011年7月22日

今回の原発の事故について考えると太平洋戦争のことを考えずにはいられない。なぜ日本と日本人はあの戦争を避けられなかったのか。米国と戦争して勝てると考えていた人間は少なくとも当時の知識人にはほとんどいなかった。もちろん軍部のリーダーたちも同じだ。彼らは間違いなく当時の「ベスト・アンド・ブライテスト」たちである。米国と戦争をして勝てるはずがないことなどよくわかっていたのだ。にもかかわらず彼らは戦争を選んだ。そして負けるべくして負けた。

これはいわば自殺行為である。なぜ日本は自殺したのか。そして、それを繰り返さないために、私たちは何をすればよいのか。私がずっと考えてきたのは、そのことである。

1930年代、満州は「日本の生命線」といわれた。満州を失うことは日本を失うに等しいという主張が声高に叫ばれた。一方、1960年代以降、エネルギー資源のない日本にとって原発は「経済の生命線」と論じられてきた。そしていまもなお、原発を失うことは日本経済を失うことに等しいとの主張がメディアで執拗に繰りかえされている。太平洋戦争と規模や領域は違っても、その精神構造はまったく同じである。

なぜ日本人はこのように自殺に向かうのだろうか。私たちにはいったい何が足りないのだろうか。その答えが、自分のなかでまだ見つかっていない。今回の原発事故を受けて、この点についてもっと深めて考えていきたいと思っている。

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