成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

最良の日本人英語を目指そう

2011年9月29日

英語には、次の3つのタイプがあります。

1. 英語ネイティブ諸国(Inner Circle)で使われる「母語としての英語」(English as a Native Language, ENL)
2. 英米の元植民地国(Outer Circle)などで使われる「第二言語としての英語」(English as a Second Language, ESL)、
3. それ以外の諸国(Expanding Circle)で使われる「国際語としての英語」(English as an International Language, EIL)

このなかで日本人がマスターすべき英語は、「母語としての英語」(ENL)でも「第二言語としての英語」(ESL)でもなく、「国際語としての英語」(English as an International Language, EIL)です。この当たり前のことを、まずきっちりと理解しておきたいと思います。そのうえで、では日本人が目指すべき英語の内容とは、いったいどのようなものであるべきなのでしょうか。

まず発音については、日本人アクセントのある英語を目指すべきです。もちろんカタカナ発音ではいけませんが、一方でネイティブ話者と同じ発音を目指してもいけません。これからのグローバル社会では英語ネイティブではなく英語ノンネイティブとの英語コミュニケーションが圧倒的に多くなります。そうした状況においてネイティブ発音にこだわる必要などまったくありません。イントネーションやストレスといった英語発音の基本を重視しつつ、個々の音については日本人としての特徴を残しておけばよいのです。

文法については、従来からの伝統的な学校文法に縛られてはいけません。従来の文法は英語を体系化するためのものであり、英語で思考したりコミュニケーションしたりするためのものではないからです。そうした文法をマスターしたからといって英語が使えることにはなりません。しかしこれは文法学習が必要ではないということではありません。外国語の習得において言語構造の理解は不可欠であり、文法を知らないままで外国語の高度な運用力を身につけることはほぼ不可能です。ただしその際の「文法」とは従来の学校文法ではなく、言語を理解し運用するための新しいかたちの「文法」です。

テキスト構造については、「わかりやすさ(Clarity)」と「論理性(Logic)」を重視しなければなりません。このふたつを備えていれば世界中の誰にもよく理解できるテキストになるからです。たしかに面白みや優美さには欠けるかも知れません。しかし「国際語としての英語」(EIL)にそうしたものを望むのは無理かつ危険です。名文を書きたいという発想を捨てて、わかりやすく論理的な英語を書いたり話したりするようにしなければなりません。

文体については、洗練されたものを目指してはいけません。私たちが目指すのは、あくまでわかりやすく合理的な一般文体です。いまは「母語としての英語」でさえも平明化の方向へと進んでおり、そのなかで私たちのようなノンネイティブが洗練された英語を目指すことにはまったく意味がありません。ラテン系の大仰な語彙や英米の文化的背景を持つ語彙はなるべく使わずに、わかりやすく知的な文章を書いたり話したりするように心がけなければなりません。

誰にもわかりやすく、そして論理的。これが私の考える日本人のための理想の英語のすがたです。この条件を兼ねそなえた英語こそ、私は「最良の日本人英語」と呼びたいと思います。皆さん、最良の日本人英語を目指そうではありませんか。

Categories: ことのは道中記 日本人の英語教育