成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

菅首相の英文ブログを再び考察する

2011年8月25日

道中記195「菅首相の英文ブログは一刻もはやくクローズすべき」では8月9日のブログ「逆行を許さず、人も仕組も入れ替えて」の日英版を対照して検討してみた。今回の道中記では7月31日のブログ「“皆の”参加が行方を決める」の日英語版を対照し、その問題点と解決方法について検討してみたい。

えっ、菅さんはあと数日で首相を辞めるのだから、こんなこと書いても仕方がないって? まあ、そりゃそうなんだが、これは日本人にとって英語をいかに書くかという大きなテーマの話であるから、そこらへんについてはどうか大目にみてもらいたい。

最初にブログの英文版を読んでみよう。

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The participation of ‘the people’ will decide our future course

I have just attended the first session of the “The People’s Energy and Environment Council,” which was held in the city of Chino, Nagano Prefecture today. While this meeting shares the same name as the “government’s” “Energy and Environment Council” that met the day before yesterday, this “people’s” meeting enjoyed the participation of a wide variety of persons ranging from researchers to heads of local municipalities to politicians, among others. Three of the four experts participating in the “Prime Minister-Experts Open Forum on Natural Energy” that was convened at the Prime Minister’s Office last month are cited as the original promoters of this “People’s” Council, with very thorough discussions taking place in a large lecture hall at a university.

I delivered a ten-minute address, during which I discussed such topics as:

- the fact that my fundamental approach to nuclear power changed after experiencing the March 11 TEPCO nuclear accident in Fukushima;

- the fact that under the government’s “Energy and Environment Council,” there has been an “interim report” oriented towards reducing the degree of dependence on nuclear power, and that finally a first step has been taken towards forming a policy in concrete terms that is congruent with my thinking;

- and the necessity of fundamental reform of our nuclear energy administration.

I stated that in particular, fundamental reform is necessary insofar as the current Nuclear and Industrial Safety Agency (NISA) within the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) is constituted in a way that it is possible for the interests of corporations to be given priority at times over the safety of the citizens, just as the Pharmaceutical Bureau of the Ministry of Health and Welfare at the time of the problem of AIDS contracted through contaminated blood products.

From a standpoint free of constraints from the past, moving forward with fundamental reforms to nuclear and electrical power administration will require thoroughgoing information disclosure as well as strict scrutiny conducted by ‘each individual’ citizen. Moreover, for a transformation of Japan’s energy structure, it is in fact critical to have participation in electricity generation and electricity conservation by ‘each individual’ household. Just as the name of today’s Council meeting says, what will determine the form of the energy of the next era is nothing other than the power of “the people.” Let’s make headway on this together.

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いかがだっただろうか。前回も書いたように、こまかな文法ミスは問題ではない。そこに焦点を当ててしまうと、一部の頑迷な英語ネイティブとその手先たちのいいなりになってしまう。

私たちの英語は国際英語のひとつである。ネイティブ英語ではない。英語としての基本ルールを守ることは大事だが、こまかな間違いについて広く許容することはそれ以上に大事である。そうでないと自分たちの英語を自分で許容できないばかりか、イラン人やペルー人やインドネシア人などの書いた英語も許容できなくなる。

なによりも大事なのは「わかりやすいこと」である。私たちは世界中の誰にでもよくわかる英語を使わなければならない。それが国際英語である。

つぎに日本語版を読んでみよう。

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“皆の”参加が行方を決める

長野県茅野市で今日開かれた、第1回「みんなのエネルギー・環境会議」に出席して来ました。一昨日の“政府の”「エネルギー・環境会議」と同じ名称ですが、“みんなの”の方は、研究者、自治体の首長、政治家など多様な人達が参加していました。先月官邸で開いた「自然エネルギーに関する 総理・有識者オープン懇談会」に参加された4人の方々のうち3人が発起人として名を連ねており、大学の大教室で中味の濃い議論が繰り広げられました。

私は10分間のスピーチを行い、
- 3.11の東電福島事故を体験して、原発に対する自分の基本的考え方が変わったこと、
- 政府の「エネルギー・環境会議」で、原発への依存度を低減させる方向での「中間とりまとめ」があり、いよいよ私の思いと合致した具体的政策形成の1歩が踏み出されたこと、
- 原子力行政の抜本改革の必要性
--などについて、話をしました。

特に、今の経産省原子力安全・保安院は、薬害エイズの時の厚生省薬務局と同様、国民の安全よりも企業の利益を時に優先しかねない体質を持っており、抜本的な改革が必要である、と述べました。

しがらみの無い立場で、原子力及び電力行政の抜本改革を進めるには、徹底した情報公開と、国民《1人1人》の厳しい監視の目が必要です。そして、エネルギー構造の転換には、《1軒1軒》の発電や節電への参加が現実に必要です。次の時代のエネルギーの形を決めるのは、今日の会議のタイトル通り、まさに「皆の」力なのです。一緒に前進しましょう。

☆☆☆

英語版と日本語版とをくらべると、英語版が日本語版のほぼ直訳であることがわかる。そのことが英語版をわかりにくくしている大きな要因のひとつである。

そこで今回は日本語の文章をまず小さな単位に分割し、それを英語化してから、もういちど統合するという手法を使ってみることにする。まず分割である。以下をみてほしい。

☆☆☆

長野県茅野市で今日開かれた、第1回「みんなのエネルギー・環境会議」に出席して来ました。
- 第1回「みんなのエネルギー・環境会議」に出席した。
- 同会議は長野県茅野市で今日(7月31日)開かれた。

一昨日の“政府の”「エネルギー・環境会議」と同じ名称ですが、“みんなの”の方は、研究者、自治体の首長、政治家など多様な人達が参加していました。
- 同会議は、一昨日(7月29日)の“政府の”「エネルギー・環境会議」と同じ名称である。
- “政府の”会議とは異なり、“みんなの”会議には、研究者、自治体の首長、政治家など多様な人達が参加した。

先月官邸で開いた「自然エネルギーに関する 総理・有識者オープン懇談会」に参加された4人の方々のうち3人が発起人として名を連ねており、大学の大教室で中味の濃い議論が繰り広げられました。
- 先月官邸で「自然エネルギーに関する 総理・有識者オープン懇談会」が開かれた。
- 同会議の発起人のなかに、同懇談会の参加者4名のなかの3人が含まれている。
- 同会議では、大学の大教室で中味の濃い議論が繰り広げられた。

私は10分間のスピーチを行い、3.11の東電福島事故を体験して、原発に対する自分の基本的考え方が変わったこと、政府の「エネルギー・環境会議」で、原発への依存度を低減させる方向での「中間とりまとめ」があり、いよいよ私の思いと合致した具体的政策形成の1歩が踏み出されたこと、原子力行政の抜本改革の必要性--などについて、話をしました。
- 同会議で私は10分間のスピーチを行った。
- 同スピーチのなかで私はつぎの点を述べた。
- 3.11の東電福島事故を体験して原発に対する自分の基本的な考え方が変わった。
- 政府の「エネルギー・環境会議」で原発への依存度を低減させる方向での「中間とりまとめ」があった。
- これにより、いよいよ私の思いと合致した具体的政策形成の1歩が踏み出された。
- 原子力行政には抜本改革の必要である。理由は以下のとおりである。

特に、今の経産省原子力安全・保安院は、薬害エイズの時の厚生省薬務局と同様、国民の安全よりも企業の利益を時に優先しかねない体質を持っており、抜本的な改革が必要である、と述べました。
- 今の経産省原子力安全・保安院は、国民の安全よりも企業の利益を時に優先しかねない体質を持っている。
- これは薬害エイズの時の厚生省薬務局と同様である。
- したがって抜本的な改革が必要である、

しがらみの無い立場で、原子力及び電力行政の抜本改革を進めるには、徹底した情報公開と、国民《1人1人》の厳しい監視の目が必要です。
- しがらみの無い立場で、原子力及び電力行政の抜本改革を進めたい。
- それには、徹底した情報公開と、国民《1人1人》の厳しい監視の目が必要である。

そして、エネルギー構造の転換には、《1軒1軒》の発電や節電への参加が現実に必要です。
- また、エネルギー構造の転換には、《1軒1軒》の発電や節電への参加が現実に必要である。

次の時代のエネルギーの形を決めるのは、今日の会議のタイトル通り、まさに「皆の」力なのです。
- 今日の会議のタイトル通り、次の時代のエネルギーの形を決めるのは「皆の」力である。

一緒に前進しましょう。
- 一緒に前進しよう。

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つぎに分割したものを英語化する。

(民間の)第1回「みんなのエネルギー・環境会議」に出席した。
I attended a non-government meeting entitled The First Everyone’s Energy and Environment Council.

同会議は、長野県茅野市で今日(7月31日)開かれた。
The conference was held in Chino City of Nagano Prefecture on July 31.

-同会議は、一昨日(7月29日)に開かれた政府の「エネルギー・環境会議」と同じ名称である。
This conference has the same name as the governmental Energy and Environment Council held on July 29.

“政府の”会議とは異なり、“みんなの”会議には、研究者、自治体の首長、政治家など多様な人達が参加した。
In this Everyone’s Energy and Environment Council, unlike the Governmental Energy and Environment Council held on July 29, a various kinds of citizens including researchers, local government heads, and politicians participated.

先月官邸で「自然エネルギーに関する 総理・有識者オープン懇談会」が開かれたが、
Last month, “The Open Gathering for Discussion on Natural Energy Between Prime Minister and Experts” was held at the Cabinet Office.

同会議の発起人には、同懇談会の参加者4名のなかの3人が含まれている。
The three of the four participants of the gathering were included in the proposers of the conference.

同会議では、大学の大教室で中味の濃い議論が繰り広げられた。
In the conference held at a lecture hall of a university, the participants made a high-spirit and productive discussion.

同会議で、私は10分間のスピーチを行った。
I made a ten-minute speech.

同スピーチで、私はつぎの点を述べた。
I stated the following points.

3.11の東電福島事故を体験して、原発に対する自分の基本的な考え方が変わった。
The Fukushima Nuclear Plant Accident on March 11 has fundamentally changed my view on nuclear energy plant.

政府の「エネルギー・環境会議」で、原発への依存度を低減させる方向での「中間とりまとめ」があった。
The governmental Energy and Environment Council has delivered the interim report to go toward decreasing dependence upon nuclear energy.

 これにより、私の思いと合致した具体的政策形成の1歩が踏み出された。
This report is a mile stone to make a concrete policy corresponding to my thoughts.

今の経産省原子力安全・保安院は、国民の安全よりも企業の利益を時に優先しかねない体質を持っている。
The present Nuclear and Industrial Safety Agency (NISA) has a structure to give priority to corporate interest rather than to public safety.

これは薬害エイズの時の厚生省薬務局と同様である。
This structure is just the same as that of the Pharmaceutical Affairs Bureau of the Ministry of Health, Labour and Welfare at the time of HIV-tainted blood scandal.

したがって原子力行政には、抜本改革が必要である。
Therefore, I believe that we need a fundamental reform to change our nuclear energy administration.

しがらみの無い立場で、原子力及び電力行政の抜本改革を進めたい。
We have to make such fundamental reform of nuclear and electricity administrative systems without any bondage.

それには、徹底した情報公開と、国民《1人1人》の厳しい監視の目が必要である。
To realize it, we need the through-going information disclosure as well as the surveillance conducted by every citizen.

また、エネルギー構造の転換には、《1軒1軒》の発電や節電への参加が現実に必要である。
We also need to ask every home to be involved in generating and saving electricity.

今日の会議のタイトル通り、次の時代のエネルギーの形を決めるのは、「皆の」力である。
As the title of this conference states, it is the power of every one of us that will decide the future energy constitution in Japan,

一緒に前進しよう。
Let’s go forward hand in hand to make a bright future.

分割した英語のみを並べてみよう。

I attended a non-government meeting entitled “The First Everyone’s Energy and Environment Council.”
The conference was held in Chino City of Nagano Prefecture on July 31.
This conference has the same name as the governmental “Energy and Environment Council” held on July 29.
In this Everyone’s Energy and Environment Council, unlike the Governmental Energy and Environment Council held on July 29, a various kinds of citizens including researchers, local government heads, and politicians participated.
Last month, “The Open Gathering for Discussion on Natural Energy Between Prime Minister and Experts” was held at the Cabinet Office.
The three of the four participants of the gathering were included in the proposers of the conference.
In the conference held at a lecture hall of a university, the participants made a high-spirit and productive discussion.
I made a ten-minute speech.
I stated the following points.
The Fukushima Nuclear Plant Accident on March 11 has fundamentally changed my view on nuclear energy plant.
The governmental Energy and Environment Council has delivered the interim report to go toward decreasing dependence upon nuclear energy.
This report is a mile stone to make a concrete policy corresponding to my thoughts.
The present Nuclear and Industrial Safety Agency (NISA) has a structure to give priority to corporate interest rather than to public safety.
This structure is just the same as that of the Pharmaceutical Affairs Bureau of the Ministry of Health, Labour and Welfare at the time of HIV-tainted blood scandal.
Therefore, I believe that we need a fundamental reform to change our nuclear energy administration.
We have to make such fundamental reform of nuclear and electricity administrative systems without any bondage of any vested interests.
To realize it, we need the through-going information disclosure as well as the surveillance conducted by every citizen.
We also need to ask every home to be involved in generating and saving electricity.
As the title of this conference states, it is the power of every one of us that will decide the future energy constitution in Japan,
Let’s go forward hand in hand to make a bright future.

そして最後、この英語をもう一度、統合化する。その際、重要でない情報については削除した。そのため最後の英文はもとより100ワードほど短くなっている。


It is Every One of Us that Decides the Future of Japan

I attended a non-government meeting entitled The First Everyone’s Energy and Environment Council, which was held in Chino City of Nagano Prefecture on July 31. In this Everyone’s Energy and Environment Council, unlike the Governmental Energy and Environment Council held on July 29, a various kinds of citizens including researchers, local government heads, and politicians participated and made high-spirit and productive discussions.

In a speech at the conference, I stated the following four points: the Fukushima nuclear plant accident on March 11 has fundamentally changed my view on nuclear energy plant; the governmental Energy and Environment Council has delivered an interim report to go toward decreasing dependence on nuclear power; this report is a mile stone to make a concrete policy corresponding to my thought; and I believe that we need a fundamental reform to change our nuclear energy administrative structure.

The present Nuclear and Industrial Safety Agency (NISA) has a structure giving priority to corporate interest rather than to public safety. This is just the same as that of the Pharmaceutical Affairs Bureau of the Ministry of Health, Labour and Welfare at the time of HIV-tainted blood scandal.

I believe that we need a fundamental reform to change our nuclear energy administration. We have to make such a reform without any bondage of any vested interests. To do so, we need through-going information disclosure as well as strong surveillance by every citizen. We also need to ask every home to be involved in generating and saving electricity. It is every one of us that decides the future of Japan. Let’s go forward hand in hand to make a bright future.

原文の分割化→英文化→再統合および調整というこのプロセスは、英文づくりにきわめて有力な手法のひとつである。皆さんもぜひ利用してみてほしい。

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