成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

イモムシから蝶々へ

2010年4月26日

イモムシから蝶々へ。私の授業を受けた人なら誰もが知っているフレーズである。翻訳とは、イモムシが蝶々へと変身するように、生命体そのものとしての変身である。その変身には、膨大なエネルギーと時間がいる。そして、それにふさわしい環境も必要である。そうした条件がすべてそろったとき、はじめて翻訳という営みが成立する。それ以外に、翻訳という営みが成立することはない。

これは、私の信念である。もしこれが間違っていれば、私の翻訳論はすべて間違いである。

最近になって気づいたのだが、この翻訳観は私の人間観と深くつながっているようだ。すなわち人間もまた、膨大なエネルギーと時間をかけながら、それにふさわしい環境のなかで、イモムシから蝶々へと変身していくと私は考えているのである。

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