成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

英語を書く際の注意点

2010年12月3日

先の道中記では日英ライティングでの名詞表現の英訳の仕方について少しふれたが、日本人が英語を書く際の注意点は他にもいくつかある。以下、それを簡単にまとめておく。皆さんが英語を書く際のなんらかのヒントになれば幸いだ。

「わかりやすさ」を最優先する
一部の才能ある人々を除き、普通の日本人に素晴らしい英文は書けない。いくら真面目にトレーニングを積んだところで、日本人の書く英文などたかが知れている。したがって素晴らしい英文づくりを目指すと、英文を書くこと自体がとてもつらくなる。ではどうすればよいのか。英文を書く際のマインドセットを「素晴らしさ」優先から「わかりやすさ」優先へと変換させなければならない。たとえば一部のビジネスマンや技術者は英文を書くことをあまり苦にしない。彼らにとって英文を書くことは単なる情報伝達の手段であり、それ以上でもそれ以下でもないからだ。ようは内容なのである。こうしたマインドセットを我々もある程度は見習うべきである。具体的には、シンプルな語彙を多く使って大仰な語彙はできるだけ避ける、複雑に入り組んだ構文は一度バラバラにほぐしたのちに複数のシンプルな構文に書き換える、などが、英文をわかりやすくするために有効な方法である。

「木を見て森を見ない」症候群を抜け出す
多くの日本人は英文を書く際にセンテンスについては熟考を重ねるが、テキスト構造の改善にはあまり真剣に取り組まない。これは逆である。まずテキスト全体があり、そのなかにセンテンスがある。ひとつひとつのセンテンスのよしあしはテキストという全体のなかで決まるのである。したがって熟考を重ねるべきは、まずはテキスト構造のほうである。

建築設計の感覚を持つ
英文テキストとはセンテンスというブロックを積み上げた構築物である。日本語の文章のように一本の糸から織り上げられた織物ではない。センテンスというブロックをいかに積み上げてパラグラフという壁や柱をつくり、いかにそれをうまく組み合わせて一個の強固な建築物をつくるかが、英文ライティングでの要諦である。したがって英語のテキストをつくる際には、建築設計のような感覚を持たなければならない。

6割主義でいく
すでに述べたように普通の日本人にはパーフェクトな英文は書けない。それを目指すと必ず挫折する。これは精神衛生上もよくない。したがって我々が英文を書く際にはそうした完全志向をきっぱりと捨て、「6割」主義に徹するべきである。また国際的なコミュニケーションの場では我々の考える6割程度の英文で十分に機能する。実務的にも問題はない。

文体をできるかぎり統一する
たとえばだけどさ、突然ここでオレがこんなふうに書いちゃったりすると、かなりヘンでしょ?このように文体の統一性は文章づくりにとって必要不可欠である。ところが日本人が英文を書くとなるとさまざまな文体が混在してしまう。日本語に対する文体感覚にくらべると我々のもつ英語の文体感覚は格段に弱いからである。そのことを十分に承知しながら、英語でも文体をできるかぎり統一するよう心がけるべきである。

SVO構文を基本にする
英語は二項対立を世界認識の基本とする言語であり、その二項対立認識の言語的表現形態がSVO構文である。したがって英文づくりの基本もSVO構文が基本となる(SVC構文がその補佐を務める)。ところが日本語は基本的に二項対立の言語ではなく「場の言語」であるから、SVO構文という英語の基本形とマッチしない。どちらかといえばSVC構文のほうが相性がよい。そのため日本人の書く英文にはどうしてもSVC構文が多くなるのである。SVC構文で表現しても間違いではないのだが、英文としては違和感が残る。したがって我々が英文を書く際にはできるだけSVO構文を使うように心がけるべきである。

修飾句のポジションに注意する
英語において修飾句が置かれる基本的なポジションは「すぐ後ろ」である。すなわち、形容詞的修飾句の置かれるポジションの基本は修飾すべき名詞のすぐ後ろであり、副詞的修飾句の置かれるポジションの基本は修飾すべき動詞または文全体のすぐ後ろである。この基本をまず心得ておくべきである。つぎに心得ておくべきは、形容詞的修飾句のポジションは基本ポジションからずれることは少ないが、副詞的修飾句については基本ポジションから大きくずれることが多いということである。大胆にいえば副詞的修飾句はセンテンスのどこにおいてもよい。ただし最後に心得ておくべきことは、基本ポジションからずれるということにはそれなりの意味があるということである。具体的には強調をしたい、音調を整えたい、もっとわかりやすくしたい、などだ。したがってこうした特別の意味を含まないかぎり、副詞的修飾句であってもやはり基本ポジションに置くべきである。

まず「型」を身につける
日本語にしても英語にして文章づくりの最初の一歩はパタン化つまり「型どおりに書く」である。とくに英語については「自由に書け」などといわれても到底書けるものではない。であるからには最初は「型にはまった」書き方をすればよい。そうしたライティングパタンのお手本となるものがアカデミックライティングだ。トピックセンテンスとサポートセンテンスといったシンプルなパラグラフ構成、プロセス、コントラスティブ、アーギュメンタティブといったわかりやすいテキスト分類など、ライティング初心者にとってアカデミックライティングはきわめて使いやすい「型」なのである。したがってまずはアカデミックライティングを習得することをお奨めする。そしてそうしたシンプルな文章づくりのパタンを習得したのち、さらに習練を積んで、最終的に自分なりライティングのパタンを身につければよい。「型から入り、型より出ずる」である。

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