成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

財務詩集

2011年2月7日

ファイナンスをテーマに詩をつくってみました。といってもみんな有名詩のパロディですが。ところで何の詩のパロディだかわかりますか? 答えは最後に。

サーカス

幾時代かがありまして
ひどい不況がありました
幾時代かがありまして
市場は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜ここでのひと盛り
今夜ここでのひと盛り
証券小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭さかさに手を垂れて
汚れた推奨株のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの銘柄が
安値いPERだと息を吐き
投資家様はみなイワシ
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
市場は真ッ暗 暗の暗
夜は劫々と更けまする
バブル時代のノスタルジアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

決算

まつかつけの会社が一社
なやましい証券市場のうへで
ぴんとたてた決算数字のさきから
糸のやうな不安がかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの会社は病気です』

勧M&A

コノ買収ヲ受ケテクレ
ドウゾ事業ヲツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ経営ダ

投資家だもの

弱きもの
 投資家
欲ふかきもの
 投資家
偽り多きもの
 投資家
そして
 投資家のわたし

成長

日本経済のあなたの空遠く
「成長」住むと人のいふ。
噫、われひとゝ尋めゆきて、
涙さしぐみかへりきぬ。
日本経済のあなたになほ遠く
「成長」住むと人のいふ

この道

この道はいつか來た道、
ああ、さうだよ
追証の花が咲いてる
あの丘はいつか見た丘
ああ、さうだよ
ほら、ストップ安の丘だよ
この道はいつか來た道
ああ、さうだよ
お客様と地獄にいつたよ
あの雲もいつか見た雲
ああ、さうだよ
トレーダーの首も垂れてる

業績

落ちてきたら
今度は
もっと高く
何度でも
打ち上げよう
美しい
願いごとのように


(原詩は最初から、中原中也「サーカス」、萩原朔太郎「猫」、于武陵作・井伏鱒二訳詩「勧酒」、あいだみつお「にんげんだもの」、カール・ブッセ作・上田敏訳「山のあなた」、北原白秋「この道」、黒田三郎「紙風船」)

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