成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

Like a Rolling Stone

2010年6月2日

いわずとしれたBob Dylanの名曲中の名曲である。ローリングストーンズほかあらゆるアーティストがカバーしている。この曲を弾き語りできっちりと歌いきれるようになることが若い頃の夢だった。30年以上たったいまでもまだ果たせないでいるが。

歌詞の内容は、栄華の座から転落してすべてを失ってしまった女に対する強烈なメッセージ。詩そのものとしても超一級の作品である。以下、歌詞の前半のみをご紹介する

Once upon a time you dressed so fine
You threw the bums a dime in your prime
didn’t you?

People’d call, say, “Beware doll,
you’re bound to fall” You thought they were all
kiddin’ you

You used to laugh about
Everybody that was hangin’ out
Now you don’t talk so loud
Now you don’t seem so proud
About having to be scrounging
for your next meal

How does it feel
How does it feel
to be without home
like a complete unknown
like a rolling stone?

You’ve gone to the finest school all right, Miss Lonely,
But you know you only used to get
juiced in it

And nobody has ever taught you how to live on the street
And now you find out you’re gonna have to get
used to it

You said you’d never compromise
with the mystery tramp, but now you realize
He’s not selling any alibis
As you stare into the vacuum of his eyes
And say, do you want to
make a deal?

How does it feel
How does it feel
to be on your own
with no direction home
like a complete unknown
like a rolling stone?

ここでは、二番目のサビの部分である

How does it feel
How does it feel
to be on your own
with no direction home
like a complete unknown
like a rolling stone?

について発音のあり方を詳しくみてみることにしよう。

まずHow does it feelだが、リズムはタッ、タッ、タッ、タンであり、そこにHow, doe, s-it, feelの4つの音節をひとつずつ乗せればよい。すべて強音節であるが、h, d, z, fという、それぞれに異なる音節のアタマの子音をうまく響かせることをお奨めする。最後のfeelの-ee-は、クチビルを横に思いっきり引っ張って、強く強く。

さて、ここでHow does it feelを文法的に分析すると、このfeelは自動詞として用いられており、「〈物が〉(…の)感触がある,体[肌]に(…という)感触を与える;〈物・事が〉(…のような)感じがする」(ランダムハウス英和辞典)という意味。例文としては、The paper feels rough [smooth].(この紙はざらざら[つるつる]している。)I wonder how it feel to be rich? (金持ちってのはどんな感じがするだろう.)などがある。ここのitはもちろん仮主語で、本当の主語はto be on your ownだ。

to be on your ownのto beは、弱い弱い音節。大事なtもbも破裂音にしないこと。「トゥービー」ではもちろんなく、はっきりとした「トゥビ」でもない。少し口ごもって音を飲み込む感じ。

on your ownのonとownは、強い強い音。ただしnの音が鼻母音化(ng)しないようにすること。日本語の「ン」は、基本的に鼻母音である。したがって「オン」ではなく「オヌ」、そして「オウン」ではなく「オウヌ」に近いイメージで発音すればよい。

on your ownのyourだが、これは「ユア」ではない(ちなみにyouも「ユー」ではない)。音声記号で書くと[u:r ]ではなく [j-]とという音が最初にくっついて[ju:r]となる。だから無理やりにカタカナで書くとすると、yourの発音は「ィユォア」という感じに近くなる。

つぎのwith no direction homeはto be on your ownとペアだとということを忘れずに。with no=to be、direction=on your、home=ownというペアリングだということ。

したがってwith noはto beと同様に少し口ごもって音を飲み込む感じ。つぎのdirectionはon yourとペアだから、di-=on、rection=yourという割り当てになる。最後のhomeは、気持ちを込めて。

つぎのlike a complete unknownも、その前の2行とまったく同じリズムだ。直前のwith no direction homeとペアリングをさせると、like a=with no、complete-un=direction、known=homeとなる。最後のknownは2行前と同じ。

したがってlike aは少し口ごもって音を飲み込む感じ。つぎのcomplete-unは強く。Complete unknownは実際にはcom, ple, tun, knownという4音節だ。

そして最後のlike a rolling stone?だが、リズムは前の3行と同じだ。気をつけなければならないのは、rolling stoneのrollingとstoneのいずれもoも[o:](「オー」)ではないということだ。どちらも二重母音の[ou]である。

二重母音の[ou]は日本語の「オウ」と同じではない。「オウ」は「二重」の母音ではなく「二つの」母音だからだ。英語の二重母音は「二つの」母音の結合型ではなく「一つの」母音である。発音の際には[o]から[u]へ「移行する」ことがポイントとなる。だから、[u]にまで完全に移行しきる必要はない。無理にカタカナで書くとすると、「オウ」ではなく「オゥ」といった感じだ。

rolling stoneのrollingとstoneの-ingと-neも音そのものが違うことにも注意してほしい。-ingは鼻母音ので鼻に抜ける音。日本語の「ン」に近い)、-neは鼻母音でないnの音。日本語の「ヌ」に近い。きっちりと区別してほしい。

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