成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

OV型とVO型

2010年6月9日

「ものごと」というように、世界は「もの」と「こと」からできている。「もの」に「名詞」、「こと」に「動詞」という名前をつければ、世界は基本的に名詞と動詞からできていると言い換えてもよい。

さて、この「もの」と「こと」が連携するときの順番について、ここから考えてみよう。たとえば、「登る」という「こと」に対して「山」という「もの」が関連するような場合である。

日本語ではこの場合、「山に登る」というように、まず「もの」をいってから、「こと」をいう。これを「OV型」と呼ぶことにする。OはObject(対象)の略称(Oはもちろん「名詞」の一種である)で、VはVerb(動詞)の略称である。

いっぽう英語では、climb a mountainというように、まず「こと」をいってから「もの」をいう。これを「VO型」と呼ぶことにする。

世界の言語を分類してみると、日本語のようなOV型と、英語のようなVO型の言語にわかれる。近隣でいえば、韓国語は日本語と同じOV型で、中国語は英語と同じVO型である。世界の言語全体をみてみると、OV型の言語とVO型の言語の数は、ほぼ同数であるそうだ 。つまり人間の言語はOV型とVO型の2つのタイプにきっちりと二分されるのであり、英語と日本語は、それぞれに別グループに属するというわけである。

面白いのは、OV型とVO型では、名詞と動詞の順番だけではなく、その他の言語要素の順番もまた逆になるという点である。

たとえば、動詞を補助する文法的機能は、日本語のようなOV型言語では動詞の後に置かれるが、英語のようなVO型言語では動詞の前におかれる。(雨が降るかもしれない/It may rain.)

また名詞の機能を補助する文法機能詞も、日本語のようなOV型言語では動詞の前に置かれるが、英語のようなVO型言語では動詞の後におかれる。(ナイフで切る/Cut with a knife)

さらにこうしたOV型とVO型の語順の相違は、人名・称号の表し方(山田教授/Professor Yamada)、日付けや住所の表現形式(平成22年1月1日/1 January, 2010、港区虎ノ門3-10-11/3-10-11, Toranomon, Minato-ku)にもみられる。

ここからわかることは、OV型言語とVO型言語では要素配列が本質的に異なるということである。そしてその2つの異なる配列原理を持つ言語の数は、世界の言語においてほぼ拮抗しているのである。どうにも不思議な感じがするのだが、これが事実らしい。

さて日本人の英語学習という観点からみてみると、このように日本語と英語とでは要素の配列原理そのものが違うのだから、日本人が英語の使う際には日本語の配列原理を捨てて英語の配列原理へと頭を切り替えなければならない。この頭の切り替えがうまくできるかどうかが重要なポイントになる。

たとえば、英語の聞き取りがうまくいかなった場合、英語の音そのものが聞き取れなかったのかもしれないが、あるいは、上に述べたような英語の要素配列に対する意識が欠けていたのかもしれない。そうした可能性をつねに探ることで、英語の学習はさらに効果的なものになるはずである。

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