「願はくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」

2011年10月20日

西行法師(1118-1190)の一首。「山家集」に載っています。意味は「死ぬときは春の桜の下で死にたいものだ。それも満月の夜に」。きさらぎは旧暦の2月。新暦のおよそ3月にあたります。望月(もちづき)はもちろん満月のこと。西行は1190年2月16日に本当に満月のもとで死んだそうです。

さて英語です。まずは日英京都関連文書対訳コーパスの訳です。

I wish to die
under the flowers in the spring,
around the day
of full moon in February.

直訳すると「2月の満月の日あたりに春の花の下で死ぬことを私は望む」。描写としては確かにそのとおりですが、これで西行がこの一首にこめた心情が伝わっているのかというと、さてどうでしょうか。詩の訳としては不十分といわざるを得ません。

残念ながらRexrothの訳詩にこの一首を見つけることができませんでした。そこで無謀にも、私が挑戦してみました。まあ、お遊びということで許してください。

What a bliss it is
if I could die
under the cherry trees in full blossom
gazing at the full moon of Spring night

blissは「至上の幸福」。通常は不可算名詞として用いられますが、ここでは可算名詞として用いました。可算・不可算という区分はあくまで認識のあり方の問題なので、固定的な可算名詞、不可算名詞というものはありません。どのような名詞でも、論理的に無理のない範囲であれば、可算・不可算の両方で用いることができます。

全体を日本語に反訳すれば、以下のようになります。

ああ、なんという幸せだろう
桜の満開の下で
満月を眺めながら
死ねるのであれば

これは私の願いでもあります。日本人なら、多くの人がそう思うのではないでしょうか。

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