「 茶は医薬として始まった。そして飲料となるに至った。中国では​、第8世紀に、優雅な娯楽の一つとして、詩歌の領域に達した。第​15世紀になると、日本はそれを一種の審美主義の宗教――茶道に​まで高めた。」を英語にすると

2011年8月14日

岡倉天心の『茶の本』の出だしです。もともと『茶の本』は天心が英語で書いたものです。それを他の日本人(村岡博、桶谷英昭)が日本語に訳しました。ですから以下のあげる英文は天心の書いた英語です。天心の英語は英米でも高く評価されています。

Tea began as a medicine and grew into a beverage. In Chine, in the eighth century, it entered into the realm of poetry as one of the polite amusement. The fifteen century saw Japan ennoble it into a religion of aestheticism—Teaism.

「第​15世紀になると、日本はそれを一種の審美主義の宗教――茶道に​まで高めた。」と、The fifteen century saw Japan ennoble it into a religion of aestheticism—Teaism.とが対応しているところに、ぜひ注目してください。英文のほうは無生物主語(The fifteen century)を用いた英語らしい表現であり、一方、日本語のほうはそれを動詞句にして「第​15世紀になると」と日本語らしい表現に変えていますね。このように、英語の名詞表現(主語)を日本語で動詞表現へと転換させるのは、翻訳における定番テクニックです。

岡倉天心は近代日本をまさに代表する人物です。『茶の本』はその天心が東洋思想の神髄を西欧に紹介するために書いたもので、新渡戸稲造の『武士道』、鈴木大拙の『禅と日本文化』とともに日本の英文出版物の白眉といえます。日本にはこのような偉大な先達がいたことを私たちはつい忘れがちです。『茶の本』は薄い本ですので、ぜひ一度読んでみてください。岩波文庫と講談社学術文庫にあります。

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