成瀬由紀夫コラム ことのは道中記

エネルギー使い回しの知恵を出すことが日本にふさわしい

2012年5月25日

エネルギー問題の解決策として風力、太陽光、地熱などの自然エネルギーの活用が広く議論されている。たしかに自然エネルギーの開発は必要であろうと思う。しかしそれよりももっと実利性が高く、また日本にとって有益なのが、熱エネルギーの徹底的なリサイクルである。

たとえば夏にクーラーを使うと室外機から熱風が吹き出る。それによって街はさらに熱くなる。熱くなるので、さらにクーラーを使いたくなる。誰が考えても、これはもっとも馬鹿げたエネルギーの使い方ではないだろうか。

これを解決するには次のような方法がある。まずクーラーの排熱を集めて湯をわかし、そのお湯でお風呂に入ったりシャワーを浴びたりする。そこに使われたお湯は下水道に捨てられるので、温められた下水道の熱を集めて電気をつくる。そしてその電気でクーラーをまわす。そのクーラーの排熱を集めてお湯をわかし…。

このようにして一度つくりだした熱エネルギーをできるかぎりリサイクルして、捨てられるエネルギーをかぎりなくゼロに近づける。現在は膨大な量の熱エネルギーが再利用されることなく無駄に捨てられているので、こうしたリサイクルが実現すれば日本全体のエネルギー使用量は格段に減る。

こうしたシステムをつくるための基本技術は日本にはすでに十分にある。あとはこれを実用化すればよいが、そのためにはさらなる研究開発が必要となり、そこに新たな投資が生まれ、市場が育ち、経済が活性化する。開発スタッフ、販売スタッフ、技術スタッフなども需要が生じるため、雇用問題が大きく改善する。なによりも無駄に捨てられるエネルギーが減れば減るほど環境への負荷が減る。加えて「もったいない」精神の伝統を持つ日本文化にはこうしたリサイクル活動はもっともマッチしている。

10年ほど前、ある国際環境会議に翻訳スタッフとして従事したとき、欧米各国の代表たちが太陽光エネルギー、風力エネルギー、原子力エネルギーなどのエネルギー開発を声高に主張しているなかで、日本代表がコジェネ発電など既存技術の省エネ効果について語っていたのを覚えている。決して派手ではなかったし、あまり注目も浴びなかったが、あれはとても日本らしい、よいプレゼンだった。

人口の増加や産業の発展のために新たなエネルギーをつぎつぎと「つくる」時代は、もう終わったのではないだろうか。大事なことは、エネルギー利用でも「身の丈」を知り、そのなかでできるかぎり「使い回しの知恵」を出していくことだと思う。メガソーラーなどのいわゆる「ビッグ」なことは欧米諸国にまかせておいて、日本は地道にエネルギーのリサイクル化を究極まで進めていけばよい。それこそが「成熟国家のフロントランナー」としての日本にふさわしい。

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