「原発事故コスト、従来の発電費用の2割」という虚妄

2011年10月25日

読売新聞にこんな記事をみつけた。

「原発事故コスト、従来の発電費用の2割」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111025-OYT1T00701.htm?from=top

この記事は、原子力発電所事故に伴う損害額などを試算する内閣府原子力委員会の小委員会が25日に発表した報告書の内容を報じたものである。

記事によると「日本の原発が過酷事故を起こす確率は最大で500年に1回」で「一基あたりの標準的な損害額は3兆8878億円」だという。

なぜ「500年に1回」かというと「日本の原発が事故を起こす確率は、全国の原発がこれまでに延べ時間数で1400年あまり稼働してきたなかで福島第一原発1~3号機が過酷事故を起こしたことを根拠に「500年に1回」と算定」したそうだ。

「一基あたりの標準的な損害額は3兆8878億円」の根拠は「これをもとに事故に伴うコストを計算すると、1キロ・ワット時あたり0・9~1・2円となった。標準的な稼働率70%の場合は1・1円」だそうだ。

この報告書にしたがえば、地域社会を支えるさまざまなソーシャルキャピタルの毀損、そしてなによりも人々の安心と希望の喪失は、今回の原発事故のコストではないらしい。

ちなみに今回の報告書をつくった内閣府原子力委員会小委員会の座長である鈴木達治郎は東京大学工学部原子力工学科の出身で、電力中央研究所の研究員だった人物である。まさしく「原子力ムラ」のど真ん中に居住する住民であり、現政府はその原子力ムラの住人たる鈴木に原発事故のコスト計算をさせたわけである。

今回の報告書の恐ろしさは、この数字が「今後のエネルギー政策を検討するための基礎資料になる」(同記事)ことだ。つまり、原発事故を起こしてもコストは発電費用の2割ですむという共通理解ができてしまうわけである。おそらくこの「共通理解」づくりこそがこの報告書の真の狙いだろう。

こうした報告書はそれほど大きな影響力を持たないのではないかと考えるひともいるかもしれない。しかし数字は一人歩きをするものである。特に内閣府でつくられた数字は今後の政策立案に必ず大きな影響を及ぼす。それを鑑みると、この報告書をこのまま看過するわけにはいかない。いまの段階で私たちがしっかりと声をあげて、「原発事故コスト、従来の発電費用の2割」などという報告がまったく虚妄であることを日本社会の共通理解としておかねばならない。それが私たち市民にできる大きな仕事であると思う。

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